妊娠/授乳関連骨粗鬆症
pregnancy and lactation associated osteoporosis
骨粗鬆症:骨が脆くなる病気
骨粗鬆症は、骨が脆くなる病気で、主に加齢や閉経によるホルモンバランスの変化が原因で高齢の方に多く見られます。
骨が脆くなる(骨密度が低下する)と、軽い衝撃でも骨折しやすくなる危険性があります
骨密度とは??
骨密度は骨の強さを表す数字です。骨は『骨質』という軸と『骨密度』で構成されています。図のように鉄筋コンクリートで例えられることが多く、骨質は鉄筋部分、骨密度はコンクリート部分と考えるとわかりやすいかと思います。骨粗鬆症はこの両方が脆くなる疾患です。
母も骨が脆くなるの!?
妊娠中、出産後は様々な理由で多くの母親の骨は脆くなります。
主な原因は以下の通りです。
①妊娠による体への負担
②授乳によるカルシウムの大量消費
③女性ホルモンの一時的変化
これらは赤ちゃんが元気に育つために起こる生理的な変化であり、もともと病気だったというよりも、妊娠・出産による側面が大きいため、ご安心ください。
ただし出産後に極端に骨が脆くなる「妊娠関連骨粗鬆症」を発症するお母様がいらっしゃいます。当院ではその専門的治療を行っております。
多くのお母さんが当院で出産後の骨密度検査を受けておられます。
骨密度を計測する方法
骨粗鬆症の診断は骨密度の数値が非常に重要です。骨密度は簡単にいうと骨の強さです。図に示したようにいくつか検査の種類がありますが最も正確で精密なのは腰骨と大腿の骨を計測するDEXA(デキサ)法です。当院ではこの機器を設置しており正確な診断を行うことが可能です。
超音波法(踵)
踵の骨を使って超音波で計測する機器です。簡単に扱えますが腕よりも精度が高く、市町村で行われる健診でよく使用されています。これで低い場合はかなり注意が必要と思われます。
DXA法(背骨・大腿骨)
微量のレントゲンを使用して測定する方法です。背骨と大腿骨で計測する大型の検査機器です。最も精密に検査ができ、正確な数値が出ます。学会もこの検査数値を診断基準として扱うよう推奨します。
骨密度の数値の意味は?
骨粗鬆症診断には骨密度の数値が非常に重要です。
一般的に日本で診断基準として用いられるのは、YAM値(Young Adult Mean)という、20〜40歳の健康な成人と比較した骨密度の割合を示す数値です。
このYAM値に基づいて診断されますが、すでに骨折がある場合など、数値に関わらず骨粗鬆症と診断されるケースもあります。
| YAM値 | 状態 |
| 80%以上 | 通常 |
| 70~80% | 骨量低下 |
| 70%未満 | 骨粗鬆症の診断 |
妊娠後骨粗鬆症の治療
▶︎ 骨密度低下の対応:生活習慣が鍵
骨密度が低い場合でも、過度に心配する必要はありません最も大切なのは日々の生活習慣の見直しです。
投薬よりも、適切な「栄養」と「適度な運動」が最も重要な対策となります。
▶︎ 治療の分岐点
YAM値が70%を下回る場合、重症度に応じて治療の内容が変わってきます。
具体的な治療の選択肢は下記のとおりです。しかし、お一人おひとりの状態により選択肢は変わるため、詳細については必ず主治医にご相談ください。
① 適切な栄養
骨の育成に不可欠な**カルシウム(Ca)**は、食事からの摂取が最も理想的です。
特に妊娠・授乳期は非妊娠・非授乳時よりも多くのCaが必要になるため非常に重要です。
ただし、カルシウムだけを摂取すれば良いわけではありません。
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最も重要なのはバランス: マグネシウムをはじめとする多様な栄養素が骨の形成と維持に深く関わっているため、バランスの良い食事を心がけましょう。
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注意点: カルシウムの補充を薬やサプリメントに偏りすぎると、心血管系の疾患リスクが高まるという報告もあるため、やはり食事からの摂取を重視することが極めて重要です。
② 適切な運動
骨の強さは、垂直荷重(頭から足に向かう重力や力)によって強化されます。そのため、適度な散歩は非常に効果的な骨密度維持・向上策です。
高齢者に推奨されるかかと落とし運動も、垂直荷重を利用した手軽な運動です。
妊娠・育児期間中は、どうしても移動する機会が少なくなりがちです。体調に合わせて、できるだけ適度な散歩を意識して生活に取り入れましょう。
③ 日光浴
適度な日光浴は、皮膚でのビタミンDの生成を促し、カルシウムの吸収を助けます。
ビタミンD生成には、お子様との散歩などの際に手の甲だけを露出して日光を浴びるだけで十分な効果があります。
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目安時間: 地域や季節により異なりますが、例えば大阪の夏場であれば10分ほどを目安にしてください。
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注意点: 日焼け止めを塗るとビタミンD生成効果が失われるため、適度なスキンケアを心がけましょう。お顔などには、十分な日焼け対策を推奨します。
④ 投薬治療
YAM値が70%を下回る場合や骨折が起きてしまった場合は、投薬による治療が必要になることが多くなります。
治療薬にはいくつかの種類がありますが、次子をご検討されている場合や授乳中は、使いにくい薬や母乳への影響が確認されていない薬もあります。
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最重要: 妊娠後骨粗鬆症の治療経験がある主治医の方針に従っていただくことが大切です。
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注意点: 投薬治療には副作用にも十分な注意が必要です。
骨の強さを示す「骨質」の強化は、現在限られたCTでしか評価できません。
骨密度がすぐに上昇しなくても、骨質の強化が進んでいるケースも多いため、数値がうまく上がらないからといって極端に心配する必要はありません。
投薬治療と並行して、先に述べた適切な栄養と適度な運動といった基本的な生活習慣を意識していくことが極めて重要です。
・ビタミンD (エディロールなど)
日光暴露で代用できるため、使用は検討が必要。
・ビスホスホネート剤 (ボナロンなど)
懐妊の可能性がある場合は胎児の影響が大きい。
挙児計画に沿って使用する。
・SERM (ビビアントなど)
断乳による効果の方が高いため推奨度が低い。
・PTH製剤 (テリパラチド:フォルテオなど)
骨折疼痛抑制のエビデンスあり骨癒合促進効果が
期待できるため骨折がある時に使うことが多い。
骨折がなければ必ずしも必要ではない。
・分子標的薬 (デノスマブ:プラリア)
あまり授乳の関連性が調べられておらず半減期
が長く使いにくいが近年調査が進められている。
⑤ 断乳
極めて高度な骨密度低下や脊椎骨折が起きてしまった場合は、以下のような手段を検討します。
【断乳による治療】授乳によるカルシウムの漏出を防ぎ、ホルモンバランスを調整して骨密度の上昇を狙います。
この方法は、適切に行えば効果が大きい反面、お母さん個人の事情や気持ちを深く考慮して行うべき治療です。
当院では、しっかりと時間をかけて相談し、お母様のご希望を聞いた上で決定いたします。
当院では妊娠後骨粗鬆症の検査と診断、治療を健康保険適応で行なっております。妊娠後骨粗鬆症が原因で骨折された方の治療経験も多くあり、心配な方はご遠慮なく受診いただければ対応させていただきます。
あわ整形外科クリニック
産前産後疼痛外来の紹介
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