整形外科コラム
medical Colum
手術なしで肩の動きを取り戻す
サイレントマニピュレーション
- 凍結肩(四十肩・五十肩)とは
- サイレントマニピュレーションとは
- 手術との違いと適応
- 治療後のリハビリがなぜ不可欠なのか
『大阪市西区の整形外科 あわ整形外科クリニック』
サイレントマニピュレーション
手術せずに肩を動かすための治療戦略
凍結肩とは何か?なぜ肩がここまで動かなくなるのか?
四十肩・五十肩という名称は広く知られていますが、その中でも特に症状が強く、肩の可動域が著しく制限された状態を「凍結肩(フローズンショルダー)」と呼びます。肩関節を包む関節包(かんせつほう)という組織が炎症を起こして線維化・癒着(ゆちゃく)し、まるで肩が凍りついたように動かなくなるのが特徴です。
症状は3つのフェーズで進行します。最初は強い痛みが続く「炎症期」、次第に痛みは落ち着くものの動きが極端に制限される「拘縮期(こうしゅくき)」、そして少しずつ回復する「回復期」です。
問題は拘縮期で、自然に待っていても改善に1〜3年かかることがあり、その間に筋力低下・姿勢の崩れ・日常生活への支障が積み重なっていきます。
また改善しない方も半数近く存在します。
「痛みが引いたから様子を見ていた」という方ほど、気づけば肩が全く上がらなくなっているケースも少なくありません。拘縮が進む前、あるいは拘縮期に適切な介入を行うことが、早期回復の鍵となります。
サイレントマニピュレーションとは?
サイレントマニピュレーション(別名:非観血的関節授動術)とは、肩関節に神経ブロック注射を行い、痛みを取り除いた状態で医師が肩を徒手的に動かすことで、癒着した関節包を剥離・解放する治療法です。
「サイレント(静かに)」という名称は、痛みなく(静かに)行う授動術であることに由来します。
手術室や全身麻酔は不要で、外来または日帰り入院で行われることがほとんどです。
処置の時間自体は比較的短く、麻酔が効いた状態で医師が肩をゆっくり動かし、固まっていた組織を安全に解放していきます。
従来の「痛みをこらえながらリハビリで少しずつほぐす」アプローチと比べると、拘縮した関節を一段階リセットした状態からリハビリを開始できるため、回復のスタートラインを大きく前進させられる点が大きな利点です。長期間改善が得られなかった方や、拘縮が強く通常のリハビリが進まない方にとって、有効な選択肢となりえます。
どのような人に適しているのか?
サイレントマニピュレーションが特に検討されるのは、以下のような状況にある方です。
まず、保存療法(消炎鎮痛薬・ヒアルロン酸注射・リハビリなど)を一定期間続けても肩の可動域がほとんど改善しない場合です。「半年以上リハビリをしているのに肩が上がらない」という方は、拘縮が強固になっている可能性があり、こうした積極的介入が回復を促すことがあります。
一方で、炎症が非常に強い急性期や、糖尿病・骨粗しょう症など骨や組織の状態によっては適応外となるケースもあります。また、腱板断裂(けんばんだんれつ)など肩の痛み・可動域制限の原因が別にある場合は、まず正確な診断が必要です。凍結肩と思い込んでいても、実は別の疾患だったというケースも少なくないため、レントゲン・MRI・超音波検査による適切な評価が前提となります。
手術(関節鏡視下授動術など)と比較すると、体への侵襲が少なく外来対応が可能な点がサイレントマニピュレーションの強みですが、どちらが適切かは患者さんの状態と整形外科専門医の判断によります。
治療後のリハビリはなぜ必要不可欠なのか?
サイレントマニピュレーションで関節の癒着を解放できたとしても、そこで終わりではありません。むしろ、その後のリハビリこそが治療の成否を左右する最も重要なフェーズです。
処置によって動けるようになった肩は、ケアなしに放置すると再び癒着・拘縮が進むリスクがあります。解放した可動域を「定着させる」ために、処置後できるだけ早期から、段階的な関節可動域訓練・肩周囲筋の筋力強化・姿勢改善トレーニングを継続することが不可欠です。
リハビリの内容は、肩の挙上運動・外旋・内旋の可動域訓練から始まり、日常生活での肩の使い方の指導まで多岐にわたります。自宅でのセルフケアと並行して、理学療法士によるリハビリを継続することで、回復の質と速度が大きく変わります。
「処置を受けたから安心」ではなく、「処置はスタートライン」という認識が、長期的な肩の機能回復につながります。
よくある質問
Q.サイレントマニピュレーションは痛いですか?
処置の前に肩関節周囲への麻酔(神経ブロックや局所麻酔)を行うため、処置中の痛みは大幅に軽減されます。また処置後は肩関節にステロイドを注入するため術後の痛みもほぼありません。
ただし麻酔が切れた後に一時的な痛みや筋肉痛のような症状が出ることがあります。通常は数日以内に落ち着くことがほとんどですが、個人差がありますので、処置前に担当医に確認しておくことをお勧めします。
Q.何回くらい受ける必要がありますか?
多くの場合、1回の処置で大きな可動域の改善が得られることが多いとされています。ただし拘縮の程度や状態によっては複数回必要なこともあります。大切なのは処置の回数よりも、その後のリハビリを継続して可動域を維持・拡大していくことです。
Q.リハビリはどのくらいの期間続けるのですか?
状態によって異なりますが、処置後のリハビリは数ヶ月単位で継続することが一般的です。
早期から積極的にリハビリに取り組むほど回復が早まる傾向があります。術後は連日リハビリをすることが望ましいためタイミングが大事です。
理学療法士と相談しながら、自宅でのセルフケアも含めた継続的なプログラムを組むことが、再拘縮の予防と日常生活動作の回復につながります。
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