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整形外科コラム

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監修/あわ整形外科クリニック院長 阿波康成
整形外科専門医/骨粗鬆症認定/産前産後整形外科医
 

妊娠授乳関連骨粗鬆症(PLO)
メカニズムをわかりやすく解説


 
このコラムで学べること
  • 妊娠中に赤ちゃんへCaが渡るメカニズム
  • 授乳中にホルモンが骨に与える影響
  • 骨の「作る・壊す」バランスが崩れる理由
  • 骨密度はいつ・どのくらい下がるのか
妊娠・授乳中に骨密度が急激に低下する「妊娠授乳関連骨粗鬆症(PLO)」。なぜ出産後に骨が弱くなるのでしょうか?カルシウムの流れ・ホルモン変化・骨代謝の仕組みを、医学的根拠をもとにお母さんにもわかりやすく解説します。
 

『大阪市西区の整形外科 あわ整形外科クリニック』

公開日2026年5月27日

なぜ妊娠・授乳で骨は弱くなる?
3つの原因メカニズム

赤ちゃんへのカルシウム供給で、お母さんの骨は削られていく?

妊娠中、赤ちゃんの骨格をつくるために大量のカルシウムが必要になります。胎盤を通じて赤ちゃんへ供給されるカルシウムは、妊娠後期には1日あたり約250〜300mgにのぼります(Kovacs CS. Endocr Rev. 2011)。
これはコップ1杯の牛乳に含まれるカルシウムとほぼ同量です。
 
食事から十分なカルシウムが摂れていれば問題ありませんが、不足している場合、体は骨に蓄えられたカルシウムを「引き出して」補おうとします。
骨は単なる体の支柱ではなく、カルシウムの貯蔵庫でもあるのです。
この「骨からカルシウムを溶かし出す働き」を骨吸収(こつきゅうしゅう)といいます。
妊娠中に骨吸収が過剰になると、骨密度の低下が始まります。
さらに授乳中は、母乳を通じて1日150〜300mgのカルシウムが赤ちゃんへ移行し続けます。
妊娠から授乳にかけて長期間、この「カルシウムの流出」が続くことが、PLOの根本的な原因のひとつです。

授乳中のホルモン変化が、骨を弱らせるのはなぜですか?

骨密度の低下をさらに加速させるのが、授乳中のホルモンバランスの急激な変化です。ここで重要な役割を果たすのが、女性ホルモンの「エストロゲン」です。
エストロゲンには骨吸収を抑える働きがあり、骨を守るブレーキのような役割を担っています。ところが授乳中は、母乳の分泌を促すホルモン「プロラクチン」が増加し、その影響でエストロゲンの分泌量が大きく低下します。これは閉経後の女性ホルモン低下と似た状態であり、骨へのブレーキが利かなくなった結果、骨吸収がさらに進みやすくなります。
 
研究によれば、授乳中の女性の腰椎骨密度は3〜10%程度低下することが報告されており(Laskey MA et al., Clin Endocrinol. 1998)、そのスピードは閉経後の骨密度低下に匹敵するとされています。
「赤ちゃんへのカルシウム流出」「ホルモン低下による骨保護機能の減弱」という二重の要因が重なることで、短期間でも著しく骨が弱くなる可能性があるのです。

骨の「作る・壊す」バランスが
崩れるとどうなる?

骨は常に「骨形成(新しい骨を作る)」「骨吸収(古い骨を壊す)」を繰り返しており、このバランスが保たれることで健康な骨密度が維持されています。これを骨リモデリングといいます。
 
通常の状態では、骨を壊す細胞(破骨細胞)と骨を作る細胞(骨芽細胞)がバランスよく働いています。
しかし妊娠・授乳期は、「赤ちゃんへのカルシウム需要増加」と「エストロゲン低下」が重なり、破骨細胞の活動が骨芽細胞を大幅に上回ります。作るスピードより壊すスピードが速くなる状態、それがPLOを引き起こす骨代謝の乱れです。
 
この乱れは血液検査の骨代謝マーカー(骨型アルカリホスファターゼ・NTXなど)でも確認でき、PLOの患者さんでは骨吸収マーカーが著明に上昇していることが多く報告されています(Stumpf U. et al., Arch Osteoporos. 2021)。骨の中身が急速に失われていく状態が続いた結果、わずかな負荷でも骨折が起きてしまうのがPLOです。

骨密度はいつ最も下がり、回復しますか?

骨密度が最も低くなるのは、一般的に授乳終了直前〜終了直後の時期とされています。妊娠から授乳にわたる期間全体を通じて骨密度の低下は進みますが、授乳をやめると徐々にエストロゲンが回復し、骨形成が再び活発になります。多くの場合、授乳終了後6〜12か月で骨密度はある程度の回復を見せます。
 
ただしこれはあくまで「ある程度の回復」であり、もともとの骨量に戻るかどうかは個人差があります。
カルシウムやビタミンDが継続的に不足していた場合、回復が不完全となり、骨折リスクが残ることもあります。また、PLOによる椎体骨折(背骨の圧迫骨折)が生じてしまった場合は骨密度の回復を待つだけでなく、専門的な治療が必要になることがあります。
産後の腰痛・背中の痛みが続く場合は、自然回復を待つのではなく早めの受診・骨密度検査(DXA法)を検討することが大切です。


よくある質問

Q.妊娠中と授乳中では、どちらが骨への影響が大きいですか?

 
授乳期のほうが骨密度低下のスピードが速いと考えられています。妊娠中もカルシウムの胎児移行はありますが、授乳中は「エストロゲン低下による骨保護機能の減弱」と授乳による直接のカルシウム移動が加わるため、骨吸収がより活発になります。
授乳期間が長いほど影響が続くため、長期授乳の方は特に注意が必要です。

Q.カルシウムをたくさん摂れば、PLOは防げますか?

 
カルシウムの十分な摂取はPLOのリスク低減に有効ですが、それだけで完全に防げるわけではありません。
ビタミンDはカルシウムの腸管吸収を高めるため、両方をバランスよく摂ることが重要です。また、ホルモン変化による骨吸収亢進は食事だけでコントロールするには限界があるため、痛みがある場合は食事改善と並行して専門医への相談をお勧めします。
特定のカルシウム補助のサプリなどでは大きな差はないと考えられていますので高ければいいというわけでもないのでご注意ください。

Q.骨代謝マーカーとは何ですか?
骨密度検査と何が違いますか?

 
骨密度検査(DXA法)は「今、骨にどれだけカルシウムが残っているか」を測るものです。
一方、骨代謝マーカーは血液や尿の検査で「今、骨がどのくらいのスピードで壊されているか・作られているか」を確認するものです。
PLOでは骨密度が低下する前から骨代謝マーカーが異常値を示すことがあり、早期発見の手がかりになります。


 
 

監修/あわ整形外科クリニック院長 阿波康成
整形外科専門医/骨粗鬆症認定/産前産後整形外科医
 

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