整形外科コラム
medical Colum
妊娠授乳関連骨粗鬆症
の治療法とは?
- PLOの治療で取り組むべきことは
- 授乳中止とは
- 保存的治療の役割と限界
- 薬物療法の適応とエビデンス
- 治療後の骨密度回復はどのくらい?
『大阪市西区の整形外科 あわ整形外科クリニック』
妊娠授乳関連骨粗鬆症の治療
PLOの治療、まず何から始めるべき?
PLOと診断された、あるいはその疑いがある場合、最初に行うべきことは「骨密度の客観的な評価」です。DXA法(二重エネルギーX線吸収法)による腰椎・大腿骨の骨密度測定を行い、低下の程度と範囲を確認することが治療方針を決める土台になります。
同時に、二次性骨粗鬆症の除外(副甲状腺機能亢進症・骨軟化症・多発性骨髄腫など)も欠かせません。PLOと似た骨密度低下をきたす疾患は複数あり、原因を誤ると治療の方向性が大きく変わるため、血液検査による鑑別が必須です。
また、採血では骨代謝マーカー(骨型ALP、TRACP-5b、NTXなど)も測定し、骨吸収・骨形成のバランスを把握します。これにより、どの薬剤が最も効果的かを判断する根拠が得られます。
授乳中止は治療の柱になるの?
PLO治療の基本として、まず「授乳中止」が推奨されることが多いです。
授乳によってプロラクチン・オキシトシンが分泌されると、エストロゲン低下を介して骨吸収が促進されます。授乳を中止することでこのホルモン環境が改善し、骨密度の急速な自然回復が期待できます。
ただし、授乳中止だけで骨密度が十分に回復するかどうかは個人差が大きく、「待てば治る」と過信するのは禁物です。
2021年に発表されたシステマティックレビュー(Kovacs & Ralston)でも、授乳中止後の骨密度回復は一部症例では自然経過でも改善するものの、重症例では薬物療法なしでは不十分であることが示されています。
患者さんの状態によっての選択が大事です。
カルシウム(1日800〜1000mg)・ビタミンD(1日800〜1000IU)の補充は、治療の土台として全例に推奨されます。これらは骨形成の原材料であり、薬物療法の効果を最大化するためにも欠かせない基本的介入です。
日照不足や食事内容の偏りがある場合は、サプリメントの活用も有効な選択肢です。
薬物療法はどのように選ぶの?テリパラチドとデノスマブの役割
PLOに対する薬物療法は、重症度・骨折の有無・授乳継続の希望・次の妊娠計画などを考慮して選択されます。現在、エビデンスレベルが比較的高い治療薬としてテリパラチドが挙げられます。
【テリパラチド(副甲状腺ホルモン製剤)】
テリパラチドは、骨形成を直接促進する薬剤です。PLOに対しては複数の症例集積研究・前向き観察研究において、治療開始後12〜24か月で腰椎骨密度が20〜30%以上改善するケースが報告されており(Dunne et al., 2016; Pelage et al., 2020など)、現時点でPLO治療において最も使用実績のある薬剤です。
日本では骨折リスクの高い骨粗鬆症に対して保険適用があり毎日投与製剤(フォルテオ®)などが使用可能です。投与期間は最長24か月で、終了後は骨密度維持のための後続治療が必要です。投与期間は患者さんと状態で相談することが多いです。
授乳中の使用は安全性データが不十分なため、投与前に断乳していることが一般的な前提条件となります。
【デノスマブ(RANKL阻害薬)】
デノスマブは骨吸収を強力に抑制する生物学的製剤で、6か月に1回の皮下注射で投与します。PLOに対する使用報告も蓄積されており(Hellmeyer et al., 2019など)、骨密度改善効果は高いとされています。
ただし、デノスマブは次の妊娠計画がある患者には原則として推奨されません。投与中止後にリバウンド現象(急激な骨密度低下・多発骨折)が生じるリスクがあることが知られており、中止のタイミングや後継治療との連携が重要です。また、授乳中・妊娠中は使用禁忌です。
【ビスホスホネート製剤について】
ビスホスホネートは一般的な骨粗鬆症治療の第一選択薬ですが、PLOにおいては慎重な検討が必要です。骨に長期間蓄積する性質があり、次の妊娠・胎児の骨代謝への影響が懸念されるため、妊娠希望のある若年女性への使用は現時点では積極的には推奨されていません(ESCEO/IOF Position Paper, 2022)。
治療後、骨密度はどのくらい回復できるの?
PLOの予後は、適切な治療を行った場合、比較的良好であることが複数の研究で示されています。
授乳中止+テリパラチド治療を行った群では、治療開始から1〜2年で腰椎骨密度が健常範囲に近い水準まで回復した例が多く報告されています。
一方、治療を行わずに経過観察のみとした場合、骨密度の回復には数年かかることがあり、次の妊娠・授乳でさらに骨密度が低下するリスクも指摘されています。
このため、PLOと診断された場合は早期に整形外科・骨粗鬆症専門医に相談し、個別の治療方針を立てることが重要です。
治療終了後も定期的な骨密度測定(年1回以上)を継続し、骨代謝マーカーの推移を確認しながら長期フォローを行うことが推奨されます。
なお、PLOに伴う椎体圧迫骨折・その他の骨折の治療については、別コラムにて詳しく解説しています。
骨折を伴う場合は、保存療法から手術適応の判断まで異なるアプローチが必要になりますので、あわせてご確認ください。
あわ整形外科クリニックでは、PLOが疑われる患者さまに対して骨密度測定・血液検査・骨代謝マーカー評価を含む総合的なスクリーニングを行い、患者さまの状況に合わせた治療方針をご提案しています。産後の腰背部痛や骨折、骨密度の低下が気になる方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q.PLOの治療は授乳を中止しないと始められませんか?
必ずしも授乳中止が治療の絶対条件ではありませんが、授乳継続中は骨吸収を促進するホルモン環境が続くため、多くの場合、断乳が治療の効果を高める重要な前提となります。薬物療法は授乳中の安全性が確立されていないため、投与前に断乳していることが一般的です。
Q.テリパラチドはPLOに保険適用がありますか?
一般的な薬物治療は保険適用となります。骨密度の値・骨折の有無・既往歴などを総合的に判断して適応を決定しますので、専門医にご相談ください。
Q.PLOの治療後、次の妊娠は可能ですか?
骨密度が十分に回復した後であれば、次の妊娠が可能とされる場合があります。
ただし、使用した薬剤や骨密度の回復状況によって個別の判断が必要です。
次の妊娠を希望する場合は、治療前から担当医に相談し、計画的に進めることが重要です。
| 受付時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
| 9:00~12:00 | ⚫︎ | ⚫︎ | ⚫︎ | ⚫︎ | ⚫︎ | ☆ |
| 15:30~18:30 | ⚫︎ | ⚫︎ | ⚫︎ | × | ⚫︎ | × |